認知症の発症を5年遅らせることによる効果を試算、認知症にまつわる多くの社会的課題に対する「発症遅延」という新しいアプローチの有効性と、健常群からMCI 群を対象とした認知機能検査(以下「MCI 検査」という)の普及に必要なルール形成についてまとめた提言レポートを公開しました。
レポートは左のリンク(モバイルの方は画面下部)よりダウンロードができます。
認知症高齢者は2012 年時点で462 万人と推定されています※1 が、現在の有病率を基に人口統計に当てはめると、団塊の世代が75 歳以上となる2025 年には667 万人と2012 年と比べ200 万人程度増加すると予測されます。これに伴い、認知症に関わる医療費・介護費は2014 年対比3 兆円増の10 兆円に及ぶと予測されます。
※1 厚生労働省「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」
認知症は一部を除き完治できないとされていますが、一方で、MCI の段階で早期に発見、適切な治療・予防対策を講じることで発症を遅らせたり、回復したりすることが明らかになってきています。仮に、予防対策等で認知症の発症を5 年遅らせることができれば、2025 年時点の認知症高齢者は405 万人、これに伴う医療費・介護費は8.8 兆円と成行予測と比べて大幅に抑制されることが見込まれます。また、認知症の要介護(要支援)者の増加が抑制されることは介護サービス全体の作業工数の大幅な削減につながり(38 万人分相当)、介護人材不足の問題解決にも大きく貢献できると考えられます。
認知症予防の鍵となる認知機能検査の受診は本人の自主性に任されていることから、早期発見・治療につながるMCI 検査が普及していないという現状があります。認知症発症遅延策の有効性を示す今回の推計結果を受け、ルール形成戦略研究所は、MCI 検査普及のためのルール形成について、政府・自治体・企業に広く提言していく方針です。