6月19日(水)にルール形成戦略研究所(CRS)は、米国シンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)の上級研究員Jane Nakanoを招聘し「The Role of Energy in the Trump Administration’s Asia Policy」を開催致しました。本件研究所(CRS)からは国内外で活動されているブラッド・グロッサーマン副所長がモデレーターとして、エネルギー安全保障について活発な議論を行いました。
以下、主要な論点です。
1.東南アジアにおけるトランプ政権のエネルギー政策:
- 今後の経済発展予測を鑑みるとアジア域内のエネルギー需要が高まることは確実であり、アジアは米国の戦略を理解する上で必要不可欠な存在という認識の共有がされました。
- 直近のトランプ政権の動向をみると、ロシアと中国のエネルギー政策について「我々の利益と価値に反する世界を作り出そうとしており、強い脅威と捉えている」と主張し、また一帯一路構想の一環である巨大なインフラ開発やエネルギー政策を進めている中国を「State-Capitalists」と批判し、警戒感を表しています。
- 米国は今までインド太平洋地域に様々な貢献をしてきたが、域内への米国の投資額は年々中国と比べると限られた額となっていました。現状を踏まえ、米国はインド太平洋地域戦略を経済面から支えるため、1億130万ドルの域内の開発援助構想を打ち出しました。
- 中でもアジアEDGE構想は、エネルギーを通して開発と成長を強化するために1年間で5000万ドルを投資。パートナー諸国のエネルギー輸入・供給を支援しつつ、インド太平洋地域に安定したエネルギー市場を育成しようとする構想です。将来的に米国は世界全体の半分のエネルギー需要を米国の輸出が担う構造を構想しており、イラクやロシアや中国へのエネルギー依存構造を変革し、大きな市場優位性を獲得しようと考えています。
- 開発援助構想の一環として、トランプ政権は開発金融機関(DFI)を設立することを規定した法案「BUILD(Better Utilization of Investments Leading to Development)Act of 2018」を2018年に成立させており、開発援助予算は600憶ドルにものぼります。本法案は、直接融資やカントリーリスク保険などを通じ民間部門主導のインフラ投資の拡大させ、開発諸国へ健全な資金調達手段を提供することを可能にする目的で可決されました。
2.米国のエネルギー政策とルール形成:
トランプ政権下のエネルギー政策の位置付けは、オバマ政権とは大きく異なっています。現連邦政府やエネルギー省(DOE)は民主党と共和党によって意見に違いはあるものの、政策課題の優先順位は低く、これらの課題は無党派の議員が中心となって議論しています。一方で、州単位で見ると、カリフォルニア州のように再生可能エネルギーや気候変動に対する注目が依然として高い州があります。加えて、米軍は気候変動を依然として安全保障上の脅威として捉えています。これらの環境課題に問題意識やルール形成を行う場合は、各州への働きかけが重要となっているようです。