以下、メールマガジンのバックナンバーを掲載します。一部にリンク切れ・ブラウザによる表示崩れなどがございますが、ご容赦くださいませ。

発行者: CRS細胞農業研究会事務局広報委員会


2020/12/07

CRS細胞農業研究会ニュースレター

広報委員長

12月2日は、培養肉商品のレストランにおける提供がシンガポールにて認められるという歴史的な出来事がありました。新型コロナ禍により企業間のコラボレーションが難しい時期ではあるものの、今後の培養肉市場は一層盛り上がることが予想されます。引き続き注目していきたいと思います。購読者様のご意見・ご感想をお待ちするとともに、本ニュースレターにて告知されたい内容がございましたらお気軽にご連絡ください。各ニュースレターのピックアップ、コメントは広報委員会の見解であり、研究会の意見を代表すものではないこと、何卒ご了承ください。
広報委員長:吉富愛望アビガイル

| 目次

 1. ハイライト
世界初、培養肉がシンガポール政府(The Singapore Food Agency)の販売承認を獲得
2. 資金調達
Z世代の購買力が次の10年の投資ランドスケープを永久に変化させる(Bank of America)
日鉄物産が発芽⼤⾖由来の植物⾁⽣産スタートアップ企業DAIZ株式会社との業務提携、出資を決定
3. ビジネス環境
AIがレシピを考案。キャベツ、パイナップルを含むプラントベーストミルクがWhole Foods にて発売開始 – Jeff Bezosが同社を支援
焼⾁ライク「⽇本初の焼⾁⽤代替⾁ 」好評につき12⽉14⽇より全店舗展開開始
Unileverが5~7年以内にプラントベースト商品売上を€1bn以上にすると発表
Beyond Meat、中国で植物由来の「豚のひき⾁」発売
4. 規制環境(国内外)
代替⾁や昆⾍⾷など普及へ 農⽔省がフードテック推進
5. 消費者コミュニケーション・その他イニシアチブ
脱炭素時代の農業、⽜・⽺⾁消費半分に ⾷⽂化⾒直しも
「宇宙バーガー」ネット資⾦調達 培養⾁をPR、ファン作りも
6. 最後に
 ハイライト

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2020/12/02

世界初、培養肉がシンガポール政府(The Singapore Food Agency)の販売承認を獲得

News ; GOOD Meat

Eat Just Granted World’s First Regulatory Approval for Cultured Meat

サマリー

  • Eat Just の培養鶏肉の食用としての安全性がシンガポール政府により承認された
  • 同社の鶏肉商品は、Good Meatブランド下のフライドチキン商品としてレストランにて販売される予定
  • 同社はシンガポールが2019年11月に作成した“Novel Foods”(培養肉などの、食品として消費された経歴のない代替タンパク質製品)向けの新たな食料規制の枠組みの下で、培養肉の安全性基準を専門家集団とともに検証。本承認の獲得には2年を要した
  • また外部審査委員会により、Eat Justの培養鶏肉は、人が食べても安全で栄養価が高いことが実証された(委員会はシンガポールと米国の国際的な科学権威である医学、毒物学、アレルギー学、細胞生物学、食品安全性の専門家からなる)
同社培養鶏肉商品について
  • 1,200Lのバイオリアクターで20回以上の生産を行うことで、一貫した培養鶏肉の製造が可能であることを実証
  • 抗生物質は一切不使用であるにも関わらず、同社の培養鶏肉は鶏肉の安全基準を満たす。加えて、従来の鶏肉に比べて微生物含有量が極めて低く、著しくクリーンであることを実証
  • 同社の培養鶏肉は高タンパク、多様なアミノ酸組成、健康的な一価不飽和脂肪の相対含有量が高く、豊富なミネラル源が含まれていることを実証
Eat Just 社について
  • 同社はCargill Inc. やTyson Foods Inc.といった食肉加工企業や、Bill Gatesなどの投資家より出資を受けている
  • 同社はシンガポール国内にてプラントベースト卵、培養鶏肉の生産開始を予定

吉富コメント:
シンガポール政府が設定する新代替たんぱく質源に関するルールはこちら

  • シンガポール政府のSFAは、食品として消費された経歴のない代替タンパク質製品を製造する企業に、毒性、アレルギー誘発性、製造方法の安全性など潜在的な食品安全リスクをカバーするタンパク質の安全性評価を実施することを要求
  • また2020年3月には、安全性評価に対する定期的な見直し・科学的アドバイスを得るために、同国SFAは新しい食品安全専門家ワーキンググループを結成
  • シンガポールで包装済みの代替タンパク質製品を販売する企業には、製品パッケージに「“mock meat”(模倣の)」、「“cultured”(培養)」、「“plant-based”(プラントベースト)」などの修飾用語を付けることをルール化

本件は、今後の培養肉産業の発展において間違いなく歴史的な出来事であり、培養肉企業全体のバリューアップにつながったと言えるでしょう

資金調達環境

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2020/11/20

Z世代の購買力が次の10年の投資ランドスケープを永久に変化させる(Bank of America)

サマリー

  • Z世代の経済力が急成長しており、2030年までには$33Tn 以上の市場に成長し(成長率400%)、世界の総収入の1/4以上をカバーすると見込まれる。2031年にはミレニアル世代の経済力を上回ると予想
  • Z世代により、サステナブル、高級品、eコマース、新メディアやオンライン決済事業が新たな利益を生み、伝統的なタバコ、肉、旅行業界が新たな圧力に直面すると予想

吉富コメント:
  • 培養肉の普及を加速させるために、Z世代を中心としたターゲットにフォーカスしたコミュニケーションを日本市場でも(海外展開を見据えるならグローバルレベルで)意識する必要があるでしょう
  • 例えば純肉(純粋培養肉)の研究開発プロジェクトであるShojinmeat Project は培養肉に関する同人誌を発行したり、 中高生向け 自宅できる培養肉キット: DIY Cell-Based Meat Kit for Teensを作成するなど、同世代の取り込みに熱心な印象があります

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2020/11/12

日鉄物産が発芽⼤⾖由来の植物⾁⽣産スタートアップ企業DAIZ株式会社との業務提携、出資を決定

サマリー

  • 日鉄物産がDAIZ社との業務提携と、同社への第三者割当増資⼀部引受による出資を発表
  • DAIZ社は、「落合式 ハイプレッシャー法」(穀物種⼦の発芽過程を酸素・⼆酸化炭素・温度・⽔分で制御し⾶躍的に栄養分や”うま味”を向上させる⽅法)について⽇本、⽶国、欧州にて特許を取得済。コロワイド社のFreshness burger の「The Good Burger」などでパテを提供
  • 日鉄物産⾷糧事業本部は⽜⾁、豚⾁、鶏⾁、その他の農⽔産物、加⼯⾷品などを世界中の様々な国々から輸⼊、主に⽇本市場へ供給しており、業界の中でもトップクラスのシェアを誇る

吉富コメント:
  • DAIZ社は取り扱うレストランやブランドが増えてきている印象です。例えば、11月9日にはナチュラルローソンが(トルティーヤ商品の原料としての)DAIZ社商品取り扱い開始を発表しました。また、11月17日には株式会社フレッシュネスのハンバーガーチェーン「フレッシュネスバーガー」がDAIZ社のパテを用いて展開する『THE GOOD BURGER』のシリーズ第2弾『THE GOOD BURGER(アボカド)』を発表しました
  • 今まで様々な会社の代替肉を食べましたが、フレッシュネスバーガーに使用されている同社のパテはお肉の再現度が非常に高く、個人的には一押しです。また食べたくなる味でした。ぜひお試しください
ビジネス環境

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2020/11/28

AIがレシピを考案。キャベツ、パイナップルを含むプラントベーストミルクがWhole Foods にて発売開始 – Jeff Bezosが同社を支援

サマリー

  • フードテック会社のNot Co はWhole Foods 全米450店舗にてプラントベーストミルクの販売開始を発表
  • 従来の代替ミルクのように麦やナッツなどの伝統的な原料ベースではなく、キャベツやえんどう豆、パイナップルなどを含む商品であり、レシピは同社の制作したAIプログラム”Giuseppe.”にて考案された。味は乳製品の再現度が高いとのこと
  • 同社は代替肉製造も行っており、NotMeatはUKのBurger King の商品“Rebel Whopper” などに使用されている

吉富コメント:
同社はプライベートエクイティ L Catterton Partners、Biz Stone(Twitterの共同創業者)によるFuture Positive(投資会社)、ベンチャーキャピタルのGeneral Catalystなどから今年9月に$85m の調達を行ったばかりである

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2020/11/26

焼⾁ライク「⽇本初の焼⾁⽤代替⾁ 」好評につき12⽉14⽇より全店舗展開開始

サマリー

  • 焼⾁のファストフードをコンセプトにした焼⾁ライクは12⽉14⽇(⽉)から⼤⾖を⽤いた焼⾁⽤の代替⾁「NEXTカルビ 50g 290円(税抜)」と「NEXTハラミ 50g 310円(税抜)」の全店舗での販売を開始
  • 10月より特定店舗にて販売していたが、売れ行きを見て全国展開に踏み切った模様

吉富コメント:
  • こちら細胞農業研究会事務局メンバーにて食べに行ってまいりました
  • 個人的な感想として、カルビは特に再現度が高いように感じました。肉と脂が口の中で裂ける、肉の筋のような食感が再現されていたと思いました
  • ハラミは分厚かったこともあり、少し(同行したメンバーの言葉を借りると)厚揚げのような風味を感じましたが、こちらもカルビ同様食品として美味しかったです
  • 焼くと表面がテカって、肉の脂があふれる見た目も表現されているように感じました。価格も求めやすく、脂の多いお肉の合間に食べることで焼き肉を長い時間楽しむことができました
  • 戸惑った点としては、代替肉の「生」の状態の商品の色が火の通った肉の色に近く、色の変化で肉の焼き加減を判断していた感覚で焼こうとすると、食べごろが判断しにくいことでした。Beyond Meat が調理過程で赤身肉の色から火の通った肉の色に変化する性質の代替肉を開発した意味が少し理解できたような気がします

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2020/11/18

Unileverが5~7年以内にプラントベースト商品売上を€1bn以上にすると発表

サマリー

  • 同社が2018年に買収したThe Vegetarian Butcher の売上が「爆発的」であると発表
  • Unilever の食品部門の2019年時点での売上合計は€19.3bn
  • 同社は乳不使用のアイスクリーム、マヨネーズ、大豆や藻類ベースの代替タンパク質への投資に注力予定
  • M&Aにも関心はあるものの、オーガニック成長に注力予定

吉富コメント:
  • 2018年の買収当時、The Vegetarian Butcher の売り上げは約€20mであったようですが、その後同事業を30か国にまで展開。同社のネットワークを強みに力強いオーガニック成長がみられます
  • 加えてUnilever は同年ころから同社が保有する知名度の高いブランド(Hellman’s、Magnum、Ben & Jerry’sなど)にてベジタリアン対応商品を展開開始
  • プラントベースト領域は今後Unileverの主要収益源となるのでしょうか

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2020/11/18

Beyond Meat、中国で植物由来の「豚のひき⾁」発売

サマリー

  • 植物由来の代替⾁を製造・販売するBeyond Meatは17⽇、植物由来の材料で作る「豚のひき⾁」を中国で発売
  • 商品名は”Beyond Pork”。当初は上海の⼈気レストラン5店で提供予定
  • Beyond Meatは6⽉、中国の電⼦商取引⼤⼿Alibaba Group Holding傘下の⽣鮮⾷品・⾷料品チェーン「フレッシッポ」を通じて、中国本⼟で植物由来のハンバーガーパテの⼩売り販売を始めると発表
  • ビヨンド・ミートは1年前に上場。上場以降、株価は60%以上上昇

吉富コメント:
  • 同社は11月9日にMcDonald’s Corpとプラントベースト商品ライン「McPlant」の展開を来年開始することを発表
  • 11月に、パンデミックで売り上げが伸びているピザハットと提携して”代替⾁を使ったピザ”の販売を発表するなど、各所にて展開を進めている
規制環境(国内外)

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2020/11/24

代替⾁や昆⾍⾷など普及へ 農⽔省がフードテック推進

サマリー

  • 農⽔省は今秋、4⽉に⽴ち上げた「フードテック研究会」を引き継ぎ、企業や⼤学の関係者ら約470⼈が参加する「フードテック官⺠協議会」を設⽴
  • 昆⾍⾷や、培養技術を使って⽣み出す「バイオ⾁(⼈⼯⾁)」など、複数の検討チームを設けて議論を進めており、2021年1〜2⽉にも報告書をまとめる

吉富コメント:
  • 本編と全く関係ないですが、「バイオ肉」となっているのは「培養肉」の聞き間違いでしょうか。「バイオ肉」という呼称は個人的においしくなさそうな連想をしてしまうため、「バイオ」と聞こえないよう発音を気を付けようと思いました
  • 海外の培養肉スタートアップと話した際に、「日本語では培養肉は何というのか」と聞かれ、「Bai-you niku」と答えたところ、「bionic meat? おいしくなさそうだね」と言われたことを思い出しました。「音」は非常に重要な呼称の要素ですので、誤解を与えないものを業界で使用する必要があることを改めて感じました
消費者コミュニケーション・その他イニシアチブ

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2020/11/23

脱炭素時代の農業、⽜・⽺⾁消費半分に ⾷⽂化⾒直しも

抜粋

  • 農業部⾨(森林保全含む)からの温暖化ガス排出は世界の全排出量760億トン(⼆酸化炭素換算、2015年度)の約28%に達する。これは電⼒と運輸を合わせた量に匹敵
  • CO2をあまり出さない耕作法の採⽤や施肥の改善、農業機械の電動化など、⽣産側で可能と考えられる対策を集めると、削減必要量の約22%の削減が限界。およそ4割は需要側で対応必要
  • ⽜と⽺からのメタン排出による環境負荷が際立って高く、⽜⾁と⽺⾁の消費量を全世界で50年までに半分以下にし、鶏⾁や植物由来の代替たんぱくに消費をシフトさせる必要あり

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2020/11/14

「宇宙バーガー」ネット資⾦調達 培養⾁をPR、ファン作りも

サマリー

  • インテグリカルチャー社は2030年代に⽉⾯基地で培養⾁によるハンバーガーを作って提供することを⽬指し、第1弾として宇宙で⾷べられる「ピクルス」を開発
  • 同社は動物の体内に似た環境をつくる装置を使い、動物細胞を低コストで⼤量に培養する技術を保有
  • 同社は培養⾁分野にて⾷⾁⼤⼿の⽇本ハムと19年に連携
  • 18年に、東京⼥⼦医科⼤学と共同で宇宙航空研究開発機構(JAXA)が中⼼に進める「宇宙探査イノベーションハブ」に参加。無重⼒下でも細胞培養できるよう研究を重ね、20年も同プロジェクトに再採択済




















 最後に


イベント告知や皆様のニュースリリースなど、本レターに載せてほしい情報や興味深い内容などありましたらぜひお気軽に共有ください。

Foot note
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